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指導者ヲ求ム [音楽]

エジプトの新たな革命記念日1月25日を機に、多くのアーティストたちも動いている。

ムバラク退陣の直前にタハリール広場に現れ、デモ参加者たちから絶大な支持を受けたシーリーン姐さん。そもそもそんなに革命に賛同していたわけでもなかったと思うのだが、一周年には広場でシュプレヒコールを先導している。いやはや。


一方、退陣直前にタハリールに現れたものの、「みんなうちに帰ろう」と逆方向の主張をしたためデモ隊につまみ出されたターメルは、今ではすっかり名誉回復なったという感じか?しかしツイッターなどを見る限り、「またターメルの泣き顔が見られるって?」と野次られていたりする。
これはターメルの新曲「スマイル」。


革命で一躍名を挙げたシンガーに、ラーミー・エサームがいる。ギター一本でデモ隊をあおりまくり、「革命のロックスター」と呼ばれている。今回、一周年記念にあわせて新譜を発表。その名も「マンシューラート」、訳すと「ビラ、パンフレット」という意味だ。革命歌手にはふさわしいタイトル。中身はムバラクを批判していた一年前とほとんど同じのようだが、「ムバラク出て行け!」を「軍政出て行け!」と言い換えたりし、今も革命は続いているのだと言わんばかりだ。
全曲、彼の公式サイトからダウンロードできる。
http://www.ramyessam.com/

そして、カイロキー。「自由の声」以来彼らの人気はうなぎ登りだ。

彼らが7月に出したアルバムのタイトルチューン「Matloub Zaeem」のビデオクリップが、このたび公式にyoutubeにアップされた。今まではネットテレビ「ゴムホレイヤ」のサイトでしか見られなかったのだが、これもやはり一周年記念ということか。

幾分長尺なこの曲には、今も革命継続中の若者たちの主張がぎっしりと込められている。彼らが革命にどんな思いを託し、新たなリーダーとしてどんな人物を求めているのかが歌い込まれている。抜粋して紹介すると...

「指導者を求む 支配者に裏切られた民衆のための
彼らは迷わされ辱められ 目も口も塞がれることを恐れていた
牢屋に引き渡され 飢えた犬どもにずたずたにされることを
だけど民衆は逆境にめげずに咆哮を挙げ
2週間で処刑人の砦を揺らし体制を壊した
圧制者たちの頭上で」

「指導者を求む 臆病者を良しとしない
僕らの鼓動までしっかりと聴いてくれる
僕らの真ん中にいて 決して宮殿なんかには住まない
墓地に住んでいる人のことを慮って
僕らと同じ物を飲み食いし 僕らの一員として暮らし
僕らの意見を聞いて取り入れてくれる
いざとなれば僕らは彼のまわりに集まって
彼のため命を投げ出すだろう」

「指導者を求む 僕らは彼を法で諮れる
信頼を裏切ったならクビにすることもできる
容姿は問わない 年齢も問わない
宗教も問わない 人間であることが唯一の条件
つまりは、真の漢を求む」

ビデオクリップも良くできている。
冒頭はナセル、サダト、ムバーラク、そしてオマル・スレイマーンによる、政権交代の発表演説をサンプリングしている。
まず登場するのがボーカリストのアミール・イード(ちょっと太った?)。カイロの町中をつぶやくように歌いながら歩いている。冷笑的に見ている通りすがりの人たち。そこへ、ギタリストのハワーリー君が加わる、そして、角を曲がると数名の若者が加わり、さらに数名と、その数は次第に増えていく。女性の姿もある。皆が手にプラカードを持っている。
クライマックス、「容姿は問わない(la yushtarat li shakro eeh)、年齢も問わない(la yushtarat li sennno eeh)、宗教も…」という箇所で紙吹雪が舞い、ボルテージは最高潮に達する。まさに去年の若者革命の縮図、といった様相だ。

歌詞を吟味すると、いろんなほのめかしがあるようだ。「宮殿」に住む指導者というのは当然、ムバーラクのことを言っているのだが、「僕らの一員として暮らし」などはアムル・ディヤーブへの当てこすりだろう。ちなみにカイロでは墓地にスラム街が形成されている。

理想の指導者像としては、なにやら前時代的(ナセル的?)な英雄像がダブって見えたり、「真の漢」と訳した部分が直訳では「男」を意味する単語dakarだったり(女ではだめなのか?)と、アラの見える箇所もある。しかし、若者たちが求める市民社会の理想像が率直に表現されているこの歌詞からは、彼らがかなり理性的・論理的に変革を望んでいることがうかがえるのである。

ところでカイロキーにしろ、ラーミーにしろ、「アルバム発表」と良いながら、CDの形になっているものを見かけない。i-Tunesでも売られていない。一体正式にはどこで入手できるんだろうか?
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Eri

こんにちは。初めてコメントします。
実は1月にBSで革命のサウンドトラックという特集を観て、衝撃的で
カイロキーというグループが気になってここに辿り着きました。
同じ地球上で同じ太陽の光を浴び、同じ空気を吸っている人々が
なぜあんなにも苦しもがいているのか。素晴らしい歌ですね。彼ら。
こうなったら世界的に有名になってグラミー賞でも獲得して仲間を増やして軍事勢力を押しつぶしてしまえばいいのに。ところで、彼らのfacebookに今、女の子が白い生地に何か書いて泣きながら訴えている記事があるのですが、何と書いてあるのですか?教えて頂けますか?とてもきつい記事です......。
by Eri (2012-02-16 19:50) 

nobuta

コメントありがとうございます。
グラミー賞、取って欲しいですね。
さて泣きながら訴える女の子の写真ですが、「ホムスの子供たちを助けて」と書いてあります。今シリアで起こっている、アサド政権による一般市民への砲撃を非難する記事かと思います。
by nobuta (2012-02-23 01:05) 

Eri

ありがとうございました。そうだったのですね。
エジプトの女の子ではなかったのですね。彼らも辛いのですね.....。
nobutaさんのタハリールへ再びの記事で

〝「広場よ、久しぶりだな」と、タハリール広場を擬人化し、古い友人と再会したかのように語りかけている。この「久しぶり」と訳した表現、直訳すれば「お前は長いことどこにいたんだ」という疑問文である。僕もカイロ留学中に、ちょっと会わないでいた知人と久しぶりに会うと、よくこのフレーズで話しかけられていたものだ。〟

なんかこの挨拶の様な言葉が国によって、捉え方の違い?を
この記事にされたこと、とても面白く拝見しました。
私もエジプト行ってみたくなりました^^。
もっとnobutaさんのブログ深く読んでエジプトを知る事にします。
行ったらカイロキーのCDを買って来よう〜♪
by Eri (2012-02-26 13:01) 

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