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女の子目線の歌姫 [音楽]

今回のエジプトでは、ナンシー・アジュラムのメディア露出は若干控えめなように感じた。やはり育休中なのだろうか。

それに対し、同じ出産後一年ほどのシーリーン・アブドゥルワッハーブの方は、各種雑誌のグラビアを飾り、大人気のようだ。やはりエジプトではナンシーよりもシーリーンなのだろう。
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左の写真は僕が留学中に愛読していた芸能雑誌『ヌグーム(明星)』誌。しばらくみないうちにずいぶんときれいな誌面になっていた。右は奥様向け雑誌だろうか。どちらも愛娘マリヤム嬢とのツーショット。こうしてみるとマリヤム嬢は、「デビュー当時の」シーリーンに良く似てるよう...(以下略)

彼女の最新のアルバムは2009年発売の「Habait(ハッベート、「好きです」)」。妊娠中の吹き込みなのだろうか、かなりぎりぎりの時期に出ているはずだが。もちろん、購入してきた。(写真はあとで添付)

帰国後、じっくりと聴いてみる。彼女のここ5年ほどの変貌ぶりは著しい。「アー・ヤー・レール(夜よ)」の頃のようなエグさや泥臭さはすっかり消えてしまい、「サブリ・アレール」の元気の良さも若干抑えめになっている。しかし独特のこぶしとハスキーボイスは健在で、バラード中心のメロディラインに骨太な地声が絶妙にマッチしている。実にいい。前述のターメル・ホスニーと並び、エジプトのロマンスィー路線を牽引する立派な中堅アイドル歌手に育っているのが分かる。

旅行中、学生たちの1人がシーリーンのCDジャケットを見て、「あ、これなんかビヨンセちゃうん?」といみじくも指摘していたが、ルックス面でもサウンド面でも洗練されている。彼女を「アラブのビヨンセ」と呼んでみてもいいだろう。

さて彼女の新譜の歌詞をじっくりと眺めてみたのだが、確認できた限り、全10曲中7曲において、一人称表現に女性形の述語が用いられていた(2,3,4,7,8,9,10)。

ここで注意が必要なのだが、アラビア語では一人称の代名詞と動詞には男女の区別はない(二人称ではある)。だから「私は愛する」みたいな表現だとその「私」が男なのか女なのかは判別できない。しかし、形容詞には必ず男女の区別があるので、「私はうれしい」みたいな表現があってようやく、「私」が男か女かがわかるのである。

逆に言うと、別に主語が男性か女性かを問わないで済むような歌詞を作ることは、アラビア語においては十分に可能なはずだが、それをあえて女性形の形容詞を用いると言うことには、何かしらの効果を狙った意図がよみとれるだろう。

これまで他の女性歌手の歌謡曲をそれほどじっくり吟味したことがないので推測だが、ここまで女性形の主体であることを強調する例はあまりないと思う(ウンム・クルスームが女性形形容詞を用いていたかどうか)。おそらく最近のシーリーンの楽曲の歌詞は、今までになく「女らしい」歌詞、もしくは「女の子目線」の歌詞なのではないだろうか。

そしてこの流れは、若手男性歌手の歌う歌詞に、女性形の二人称表現が多く現れているというもう一つの変化と対応しているのではないだろうか。というのが現在の僕の関心。

ただし、このような歌詞の上での変化が、現地のエジプト人、アラビア語話者たちにどのように受け取られているのかはまた別問題。彼らは日常的にも、女に向かって男性形で呼びかける、みたいなことを普通にしているみたいなのだが、これも要確認。誰か詳しい人、教えてください!
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kisara

「アラブのビヨンセ」と言えば、もう一人・・・バーレーンのヒンドを思い出しました。音楽的には第2のアハラームですが。http://www.youtube.com/watch?v=Wnnmnss8o_M

一ヶ月ほど前だったと思いますが、久々に iTunes でアラブのネットラジオを聴いてたら、下の記事のターメル・ホスニーの曲ばかり流れてましたよ。
by kisara (2010-05-14 22:21) 

nobuta

たしかに、ヒンドって歌手は見た目ビヨンセっぽいですね。
レバノン以外の、わりと浅黒い肌のアラブ女性歌手にとってはビヨンセの化粧やファッションがまねしやすいんでしょう。
こてこて湾岸系の歌とのギャップがすごい!
by nobuta (2010-05-17 14:53) 

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