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10年後のアラブの夢 [音楽]

某SNSのアラブポップス・コミュニティでご教示いただきました。

1998年の「アラブの夢」から10年。再びアラブ世界のポップスターたちが集結し、アラブの団結を訴える歌を発表した。その名も「アラブの良心」!

まずはこのYouTube画像を見てもらいたい。といってもこのビデオ、40分以上もあるので、全部見通すのも一苦労だ。5分割されているので、立て続けに見るべし。



「100人のアラブスター」というふれこみだが、ソロパートがあるのは33人。(神の美名の約数だが、何か意味があるのだろうか?)

さあこの33人のスターたち、最後のちびっこ歌手のソロをのぞけば、それぞれ2人ずつ組になってデュエットを繰り広げている。以下に、ポップス・フリーク的観点からこの16組の壮絶バトルを見てみたい。

とは言ったものの、初っ端にナシードを歌っている①ワディーウ・アッサフィーと②ムハンマド・アルアザビーという2人のベテランのことはよく分からないので飛ばす。

ビデオで言うと6分22秒あたりから伴奏が始まり本編となるが、そこからトップバッター、③ラティーファLatifa(チュニジア)が登場する。一昨年のレバノン戦争の時にはイスラエル批判のキャンペーンの先頭に立った彼女はこのポジションがふさわしかろう。新作で見せたフェイルーズばりの癒しボイスは影を潜め、本来の伸びやかな高音が帰ってきた。対するはエジプトのベテラン④ハーニー・シャーキルHani Shakir。日本で言う五木ひろしっぽい安定感で、出だしと締めの両方をラティーファに譲りつつも、守りに徹する感じの危なげない歌唱だ。

Part2に移ると、早速⑤ナンシー・アジュラムNancy Ajram(レバノン)が登場。例によって甘あまのアイドルボイスだ。この舌足らずなところがいい!と思える人は立派なアラブポップスフリークだ。そして迎え撃つはライの帝王⑥シェブ・ハレドCheb Khaled(アルジェリア)。この人の声はもはや伝統楽器だ。一声だけで空気が変わるし、フェイクの仕方が誰よりもかっこいい。おそらく今回のメンツで国際的知名度が最も高いのはこの人だろう。それが当代きってのアイドル、ナンシーとのデュエット!至福の1分45秒間だ。

興奮醒めやらぬまま⑦シーリーンSherine(エジプト)登場。ナンシーの直後にシーリーンとは、トロのお口直しに牛タンを食べるようなものだが、いつも通りのハスキーボイスに魅了される。タンクトップといういでたちの飾らないところも良い。対する⑧サービル・ルバーイーSabir Ruba`i(チュニジア)は端正な歌唱。髪の毛はなくともイケメンはイケメンというところを見せつけてくれる。

次に⑨リダー・アルアブドゥッラーRida al-Abdallah(イラク)の信じがたい高音だ。以前彼の曲を聴いたときには「カーゼムそっくり」と思ったものだが、全然別物になっている。サビの部分が若干他の人と発音が違うような気がするのだが、イラク訛だろうか。対するは管理人一押しのエジプトの新人⑩アーマール・マーヘルAmal Maher。おそらく今回の最年少だろう(最後のちびっ子除く)。10年前のディヤナ・ハッダードに相当するポジションだと思うがどうだろう。声量もあり、凛とした歌唱は正統派の貫禄が漂う。

⑪ハーレド・サリームKhaled Salim(エジプト)は、いつもながらのメロウな歌声。ただ本音を言えば、この人の代わりにターミル・ホスニーに入ってほしかった。⑫アハラームAhlam(バハレーン)も貫禄たっぷりにねっとりとしたコブシを聴かせる。

いきなり洋楽的なコブシで割り込んでくるのが⑬ディヤナ・カルズーンDiana Karzoun。この人、ヨルダン人だったのか。⑭アブドゥッラー・アルルワイシド`Abdallah al-Rwaished(クウェート)の伝統的ないでたちとは好対照。しかしルワイシド、サビの部分の声、高!

ここからPart3。褐色の⑮ワアドWaad(サウジ)も意外と西洋的な発声をしている気がする。対する鼻声の⑯イハーブ・タウフィークIhab Tawfiq(エジプト)が妙に押さえたトーンなのが違和感。フェイクもしまくっている。

うわ、⑰ムスタファ・マフフーズMustafa Mahfuzって誰だ?すごい音域だけど。知らない。⑱アマル・ヒジャージーAmal Hijazi(レバノン)は嘘っぽい金髪が玉に瑕だが歌はうまい。それにしても⑰番は誰だ?

⑲ワーイル・ジャッサールWael Jassar(レバノン)は最近人気の男性歌手だがイーワーンと見分けがつかないな。⑳アマニーヤ?Amaniyaに至ってはさっぱりわからん。

(21)アーミル・ハサン`Amer Hasanも知らない人。おそらくは大物シリア人歌手(22)アサーラAsala姐さんの引き立て役だろう。とはいえ僕は実を言うとアサーラの野太い声が好きなので、このあたりでアサーラ節が聴けるのはとても旨いと思う。中だるみしなくて。

(23)シェブ・ジーラーニーCheb Jilaniも最近よく聞く名前だが、アルジェリア人なのだろうか。マシュリクを拠点にやっている人だが。ナンシーはナンシーでも(24)ナンシー・ザアブラーウィーNancy Zaablawy(レバノン)だ。

出た!イラクのイケメン(25)マージド・アルムハンデスMajid al-Muhandesだ!目が怖い!この人もサビがなまっている気がする。いや、むしろ、他の人がエジプト方言なのを、イラク人だけが訛らずに歌っているのか。(26)アミナAminaって誰?

(27)ルトフィー・ブシュナークLutfi Bushnaq(チュニジア)って、あのウード弾きの人か。日本にもきたことがある。へー、あの人こういうのも歌ったりするんだなあ。で、(28)ヤーラYara(レバノン)だ。この2年くらいで一躍人気者になった彼女もいい仕事をしている。実は彼女のパートは歌詞が良くて、「スンナもシーアも同じレバノン人」みたいなことを歌っている。

(29)アムル・アブドゥッラート`Amr `abd al-Latは知らない人。(30)ナワールNawal(クウェイト)は大物なので、その引き立て役か。ナワールもなんだかサビの部分の訛が違うな。これでサビの部分、エジプト方言で歌ってないのは二人のイラク人とクウェイト人一人、ということになる。

(31)ヌール・ムハンナーNour Muhannaという名前を聞くと、シリアのベドウィンの出身なのかと思ってしまうが、どうなんだろう?前にナンシーと一緒にエジプトの歌謡賞を受賞したというニュースを見たことがある、伝統的な歌い手のようだ。(32)ファーティン・ヒラールベクFaten Hilal Bakってこれまた変な名字だが、知らない人。ムハンナーが最後に「アッラーフ・アクバル!」と締めくくっているのだが、なんでこんな所でアザーンを唱えているのかとやや不思議な思い。

...以上、16組バトルのレビューを試みたが、知らない歌手はまだまだ多い。名前は知ってても、湾岸の歌手は解説できるほどは知らないなあ。書いてるうちにだんだん失速してくるのを痛感した。

しかし、失速しているのはそもそものラインナップが竜頭蛇尾というか、初めのうちにナンシーもシーリーンも使い切ってしまっているので、後ろにはあんまりスターが残っていない、みたいな状態になっているせいだと思う。まあ40分もある曲だから、初めのうちだけ一生懸命聴いて、あとはやめちゃうと言うことも想定しているんだろうか。

でもってこの歌の最後の部分は、ソロをとるには至らないその他の歌手たちが続々と出てくる。全部数えちゃいないが、こういう人たちを全部足して、「100人のスターたち」ということになるんだろう。国別で5~6人組になっているのが面白いのだが、意外と「シリアのスターたち」とカテゴライズされている歌手が多いのに驚く。ソロをとれないのはアラブ全体での知名度が低いからだと思うが、確かにシリア出身の歌手でアサーラ以外にぴんと来る人はいない。しかし実力のある歌手は決して少なくはないのだろうと思われる。

そして最後に演説をぶっておいしいところを持っていく、プロデューサのアフマド・イルヤーン。前奏部分にも出てきてなにやら演説をしてるのだが、いったい何者なんだこいつわ!?という疑問ばかりが残ってしまう読後感だ。

というわけで次は歌詞の説明いきます。本当か?
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