SSブログ

英愛探訪記3:ボドリアン [旅行]

4d068ac5.JPGオクスフォードへは、ロンドンのパディントン駅から快速電車で50分ほど。十分日帰りできる距離である。「快速」と書いたが電車や時刻表にはExpressなどという表示は無いので、くれぐれも各駅停車と間違わないようにしたい。上記の倍の時間をかけて田園風景を眺める「イングランド車窓の旅」になってしまうからだ。



牛津さてオクスフォードは中世の町並みがそのまま残る風光明媚な場所。イギリスに時代劇があれば、ここでは絶好の撮影ポイントになりそう。ついつい太秦の映画村を連想してしまう。観光客も多いし。

カレッジの古い建物がそのまま観光名所として開かれているので、色々と見物していきたいのだが、とりあえず調査地であるボドリアン図書館へ急ぐ。ツアーの訪れる「旧」ボドリアン図書館の入り口右手、Addmission Officeをまず訪ねる。

旧館ここで利用証の手続きとなるが、今回自分のミスから大変なことになりかけたので、恥を忍んでその失敗談を記しておく。

アドミッション・オフィスでは、事前にネットで送られてきた申請書(このpdfファイル参照)をプリントアウトして埋めたものと、大学院の英文修了証明書、それからパスポートを係の人に手渡す。しかし!申請書に目を通す係の人の表情が険しい。どうやら不備があるようだ。今回は写本の現物を見る調査なので、あらかじめその旨をメールで伝えてあったのだが、写本現物を見るにはボドリアン図書館では、大学教授などしかるべき人からの推薦書が必要とのこと。推薦書と言っても、先に送られてきた申請書の右半分が推薦書になっており、必要箇所にサインや肩書きを埋めるだけでいいのだった。そこで日本にいるうちに指導教官(職場のボス)からサインを頂いていたのだが、係の人が言うには、サインが必要な2箇所のうち1箇所にサインがない、だから写本を見せる許可を与えるわけにはいかない、ということだった。確かに、改めて自分で申請書を見てみたら、ぽっかりと空欄になっている箇所がある。係員曰く、急いで日本に連絡を取ってきちんとした書類をファックスしてもらうか、オクスフォードに在籍している新しい推薦者を捜せ、とのこと。そんなの無理だよ~!しかし、申請書の作りもずいぶん紛らわしいじゃないか!と言いたいところをぐっと我慢。感情にまかせて主張しても、苦手な英語ではうまく伝わらないだろうし、第一そういうアピールはこの国では決して良い方向にはつながらない様な気がしたのだ。だってここは紳士の国。

とりあえず冷静を装い、内心うわー、どうしよう!?と慌てながらも、係の人には東洋部門担当者と連絡を取るから待て、と温かい申し出をいただき、不安ながらもそのまま事務所内で粘らせてもらう。待つこと5,6分、東洋部門の人ではなく、事務所の上役らしき人が現れる。係の人が事情を説明する。すると上役らしき女史はにっこり、「今度ボドリアン図書館に来たときに、改めて完全な申請書を出して下さい。今回は特別に写本閲覧を許可します」とのこと。また、「気にしないで下さい。こういうケースは良くあることなのです。我々の申請書がよくないのです」とまで言って頂く。

許可が出た所で、そのまま登録手続きに移る。その場で利用証の写真撮影。1週間利用の登録料5ポンドを払い、そして「宣誓文」を読みあげて、利用証交付と相成る。「宣誓文」については事前に聞いていたし、英語で何か読みあげさせられるものだと思っていたのだが、事務室には100カ国語以上で宣誓文を翻訳してある小さなファイルが常備されていた。当然僕は日本語で読みあげることになったのだが、はて、こんなの読んだ所で誰が理解するんだろう?と疑問に思いつつも、宣誓とは自分の良心との対話であったかと思いいたる。なんて。ひととおり手続きが終わり、係の人に「次は必ず正しい書類を持ってきます」と言うと、あっさり軽いジョークとして取られて愛想笑いされる。事務所を後にする。

新館東洋部門の閲覧室は、観光ルートになっているボドリアンの通りを隔てた北向かい、新館の中にある。荷物を預けて閲覧室へ行くと、あらかじめメールで伝えてあった必要な写本がすでに用意されている。すばらしい手際の良さ。もちろん、追加で写本を出してもらうのも可能。出てきた写本はいずれも帙に収められており、さすがに保存状態がよい。

ボドリアンのアラビア語写本カタログを見せてもらったが、18世紀末に刊行された超大型図書が2冊。すべてラテン語で書かれているので、はじめは出版年すら分からないほどだった!(MDCCXX...というやつ)おそらく他の機関ではなかなかお目にかかれなさそうな代物なので、よーくブラウジングしておく。それにしても、このカタログをまとめた18世紀の先達は、21世紀になって東洋から僕のような人間がこのカタログを読みに来ることを想像しただろうか?いや、そもそも、おそらく当時のヨーロッパにあって最高のアラビア語の知識を持っていたであろう彼らは、同時代の誰かに向かって知識を公表することに、どういう意味を見いだしていたんだろうか?同時代人の中にはほとんど誰も彼の知識に付いていけるような人はいなかっただろうに。たとえ誰にも通じなくても、目の前にある事柄をひたすら書き残しておく、黎明期のオリエンタリストが持っていた知の征服欲とでもいうものに、身の毛がよだつ思いがした。

ここで、恐ろしく些末なことだがメモ。ボドリアンの東洋部門で写本の配架番号に使われているMarshという略号とMarshallという略号、この2つは実は全くの別物であることが明らかになった。今回、Marshall 36という写本を頼んだつもりが、Marsh 36という無関係の写本が出てきたりして難儀した。もちろん、ちゃんとMarshallまで書かなかったこちらが悪い。いろんな所にトラップが仕掛けられているようで、ボドリアン、侮れない。

さて、ひととおり調査を終え、写本のコピーを申請する。写本のコピーは刊行本を複写するのとは別の用紙があるのだが、詳しくは閲覧室備え付けの申請書の注意書きを見れば問題ない。料金は一コマあたり0.6ポンドくらい。今回見た写本はいずれもマイクロフィルムにはなっていないため、複写するには一から撮影してマイクロフィルムに訳という作業を経るはずだ。しかしこっちとしてはマイクロよりはデジタルデータとしてCD-Rなどに保存したものをもらいたいので、係の人にその旨聞いてみた。今問い合わせ中。

代金の支払いはキャッシュはもちろん、クレジットカードでも可能。現物は日本に送ってもらうことにした。さて。

東方おまけはオクスフォード駅前の中華料理屋「東方不敗」。屋号と建物とがおそろしくミスマッチだが、ブリジット・リンのような妖しい店主がいたのかも知れない。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。