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フランス移民と音楽 [音楽]

早稲田大学で行われたアマジーグ・カテブの講演会に行ってきました。

AmazighKateb.html

ライブイベント『ラマダンの夜』で来日中の、グナワ・ディフュズィオンのリーダー。ライブの方にはひとっつも見に行けないのに、講演会だけ見に行くというのは反則だろうか?

でもひとまず彼が登場するなり、そのスターオーラに圧倒される。

司会の粕谷先生によると、アマジーグも1972年生まれ(つまり、僕と同い年)とのこと。それでたちまち親近感を覚える。もうね、世界中の1972年生まれを応援しますよ僕は。キ○タクもホリ○モンも、ヨン様もジネディーヌも、もうみんな。

グナワという音楽から現代フランス社会の状況まで、短い時間に色々な話題が盛り込まれたが、アマジーグの人柄もあってか終始アットホームな雰囲気で進む。ただアマジーグは結構喋り倒すタイプのようで、音楽性からスピリチュアルなことまで穏やかな口調ではあるがべらべらべらと喋り続ける。日本語通訳の方はかなり丁寧に訳して下さったが、いかんせん量が多い。やっぱり自分で直接聞き取れないというのは何とももどかしい。もっとフラ語ができればなあと思うことしきり。まあ、思っても詮無いことなんだけど。

印象に残った内容をいくつかメモしておこう。(いずれも記憶による再現によるメモ)

まず、90年代後半(つまり、フランスW杯の頃)にはバラ色のように見えたフランスの移民社会が、今は何でこんなことになっているのか?という質問に対してアマジーグは、当時フランスで流行ったライなどの音楽は、白人が移民に対して「ラジオを聞いてご覧なさい。我々はみんな君たちの歌を聴いているんだよ。君たちがこの社会で阻害されてなんているものか!」という、白人の側のアリバイ作りというか言い訳に用いられたんだ、というようなことを語っていた。

これを聞いて僕は、なるほど!と膝を打つと同時に、ずいぶん身も蓋もない言い方をするなあとも思った。それじゃあライなんて音楽は、飼い慣らされたへなちょこだ、って言ってるようなものだ。しかし、移民を代表して、音楽を武器に新たな戦いを挑もうとするアマジーグにとっては、これは決して譲ることのできない線だろう。移民音楽の先行者であるライは、彼にとっては乗り越えるべき壁なのだから。

..とはいえ、日頃エジプト辺りの飼い慣らされた音楽を聞いてる僕にとって見たら、まあ大目に見てやってよ、という気持ちもある。飼い慣らされようと、蔭でベロ出してるかも知れないんだし。

もう一点、アルジェリアで「原理主義者」に暗殺された歌手マトゥーブ・ルネス(こういう固有名詞が聞き取れずに難儀しました..)をどう思うか、との質問に対してアマジーグは、彼は一般に原理主義者に殺されたといわれるし、実際にもそのとおりなのだろうが、彼はまた当時のアルジェリア政府にとっても厄介な存在であった。彼の暗殺の罪は、アルジェリア政府と原理主義者、双方が負うべきである、という返答。

ここで僕は膝を打ちすぎて、膝蓋腱反射を起こして前の人の椅子をしたたかに蹴っとばしてしまいました(ウソ)。原理主義イコール音楽など外来文化の抹殺、というステロティップに対し、実に明快な答えをくれたものです。とはいえムスリムであるアマジーグがこれ以外の答えをするはずもないか。とすると質問者が何でその人物のことを持ち出してきたのか、その意図がつかめない。アマジーグからアルジェリアの原理主義者を批判する言辞を取ろうとする、やや意地悪な意図があったのでは?と思ったりもした。とはいえ、肝心のマトゥーブ・ルネスについて、僕は何の予備知識も持ち合わせてなかったので、誤解があるかも知れませんが。

でも何よりも一番印象に残ったのは、彼にとっての日本文化とのファーストコンタクトは「グレンダイザー」だった、という発言。そうか!さすがは同世代!でも、彼が見たグレンダイザーはアラビア語版だったのか、フランス語版だったのか、後者であるとしたら、アルジェリアのテレビ局を通してみたのかフランスなのか、ということが気になってきた。よっぽど質問しようかと思ったんだけど、バカだと思われるだろうから遠慮しました(笑)。

それにしても、あらゆる質問によどみなく答えるアマジーグは、とんがった彼の音楽のイメージとは対照的に、なんだか偏差値高そうな、文化資本の豊かそうな、つまりは育ちの良さそうなイメージを受けました。彼の音楽は「ノリ一発!」ってんじゃなくって、ちみちみといろんなことを計算しながら作ってるんだろうなあ、と。

それから客席にひょっとして、フランス語会話のミカエル来てた?あとパトリス・ジュリアン氏も?
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