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アラブの国にロックは流れる [音楽]

3年前の「音樂夜噺」でのことだったか、僕の話をわざわざ聞きに来てくれた大学時代の友人から、「エジプトにはロックはないのか?」と質問されたことがあった。それに対して僕の答えはこんな感じだった。

「たとえばエジプトの大学生がバンドを組もうとするだろ。で、『じゃあ俺ギターやるからおまえベースね、おまえはドラムス』っていう風に割り振ってると、横合いから、『じゃあおれダルブッカ』とか、『おれウード』とか、『おれのいとこがシンセ(ただし四半音の出るやつ)持ってるぞ』みたいなのが入ってきて、結局演奏できるのは田舎の結婚式みたいなエジPOPばっかりになっちゃうんだよ」

つまり、エジプトでは自前の歌謡曲の伝統が濃すぎて、ロックンロールが入り込む余地がないのである、ということだ。これがその当時の、そしてつい最近までの、僕の意見だった。

しかし、偶然発見したWust el-Baladなるバンドのこの動画を見て、この考えは大きく改めざるを得なくなってしまった。ワダよ、これを見てくれ!

「ママ!おれは結婚したいんだ! でも金がねー!」
「彼女はザマーレクに住んでる でもおれが住むのはアッバーセイヤ!」
ストレートで馬鹿な歌詞。若者の結婚難は、日本で言えばフリーター問題に匹敵するくらい、エジプトの若者にとっては切迫した社会問題だ。ワウワウギターの泣きのフレーズもイカす。これぞまさにエジプト産のロックンロールだ。

バンド名ウスト・ル・バラドは「町中、下町、ダウンタウン」といった意味。カイロ庶民の声を代弁するという意気込みだろう。公式サイトはこれWikipedia英語版にも説明がある。

YouTubeを見れば、彼らのライブ映像などが数多くあがっている。たとえばこれ。ボーカルのハーニー・アーディルという人が、なんとHey Judeをコピーしている。
アラブでビートルズ。ありえない!あり得ないくらいかっこいい!

こんなかっこよくコピーするアーティストがアラブにもいるんだから、ポールには是非パレスチナ側でもライブを行ってほしかった!(

しかし、である。

彼らの現時点で唯一のビデオクリップ、「アッラビー・リー」を聞いてみると、なんだかあんまりかっこよくない。
かっこわるいとは言わないが、ロックらしさが薄れていて、さわやかにハモったりしている。これはどうしたことだ?

彼らの所属するプロダクション会社、Star Gateのサイトを見ると、「アラブのBSB」ことWAMAなんかを手がけている会社らしい。あ~、WAMAの路線か。まあ、いろいろな思惑やら力学が働いて、ロックっぽいロックはビデオにできないのではないだろうか。ロックだと反体制的、あるいはアメリカ的と見なされて、エジプトではあまり売れないとか?その辺はよく分からない。

ともかく、彼らの神髄はどうやらライブにある。当分は携帯カメラで撮ったようなyoutubeの粗悪な動画でも見ておくしかなさそうだ。

ちなみに下は、彼らが最近やったシリアの歌姫アサーラとのジョイントライブの宣伝。これはこれでかっこいいのだが、単なるフラメンコギターのバンドのように見えてしまう。彼らがロックっぽいロックで大ブレークしてくれるようなら、エジPOPの未来もずいぶんと変わってきそうなのだが。


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