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英愛探訪記6:チェスター・ビーティー [旅行]

1b7bcfee.JPGニューヨーク出身の鉱山王が、世界中の古書を買いあさり、それらをみんな隠居地ダブリンに寄付してできたという、チェスター・ビーティー図書館。個人で集めたにしては質も量も驚くべき水準を誇っている。どんな経路で集めたのか、中世アラビア語の写本も有名な作家の直筆本などがちらほらあり、その道の人には見過ごせない。

場所はダブリン城遺跡の中、ダブリン市庁舎の隣にあるのだが、北岸から歩いて来たら思いのほか道がややこしくて、たどり着くのに難儀した。この町、中世風のごてごてした建物が溢れている。

chester城塞内の芝生広場に面した、風見鶏が立っている建物がチェスター・ビーティー図書館。入場料は無し。受付で「Admission Officeはどこですか?」と尋ねると、まごまごされてしまったが、研究目的で来た旨を告げ、あらかじめ用意した登録用紙(これこれ)を見せると「二階の閲覧室へ行って下さい」と案内される。

閲覧室ではメールのやり取りをした司書の人がいて、彼女に、サインをした登録用紙やらパスポートやら大学院の証明書やら一連の書類を渡す。入館証などは特になく、極めてアットホームな雰囲気。読みたい写本はすでにメールで伝えてあったので、きちんと用意されていて、僕が使うべき席までもセッティングされていた。至れり尽くせりだ。ただし、今回読む写本は非常にもろくなっているということで、机の上に大きなクッションが設置されてあった。その上に写本を置いて読めと言うことらしい。

閲覧室は狭いながらもいろいろと工具が揃っている。A.J. Arberryによるアラビア語写本目録全7巻プラス索引もあり、とりあえずチェック。ただし最近数年で購入した新着写本については、目録は未刊行だということで、調べることはできなかった。

この図書館、使い勝手はいいのだが、注意すべきは閲覧室の開館時間が短いこと。10時から17時までとあるが、実際には16時半には「写本を片づけるから」とか言われて追い出されてしまう。昼休みも1時間15分きっちり閉まる。土曜日は開いてない。なかなか効率的に使えないのが難点だ。

それにしてもすごいのは、チェスター・ビーティー卿の守備範囲の広さ。彼のコレクションはアラブ・中東関連に留まらず、インドや東アジアまで覆っている。閲覧室でたまたま知り合った日本人研究者の人によれば、ビーティー卿は大正時代に来日しており、おそらく神保町の一誠堂あたりを通じて、良い本をごっそりと買っていったそうだ。その中には、10点くらいしかない絵巻物の1点があったりして、日本の古典文学者にとってもマストゴーな研究機関なのだそうだ。僕はそれ以前に、こんな最果ての地(失礼!)で日本文学研究者と出会えるとは思わなかったのだが、それはあちらこそそう思われたことだろう。

限られた調査期間ではあったが、めぼしいものを一通り見せてもらい、あとは帰国後にコピー依頼をすることにした。
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