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ファーティミッド・ランド [旅行]

7b4183bb.JPG本職の方で重要な研究対象としているとある中世の歴史家がいるのだが、今回その人物が建立したマドラサ(学院)を見学に行った。場所はカイロ旧市街(イスラム地区)、アズハル・モスクの南東にある。

それほどメジャーな建築物でもないので、訪れる人とてなく、蔓草に覆われて鬱そうとした廃墟...というのを勝手に想像していたのだが、あに図らんや、ぴかぴか煉瓦で改築済みのやたらすっきりした建物だったので、拍子抜けした。写真ではただのモスクっぽい立派な建物にしか見えないかも知れないが、何が不満かというと、真新しすぎてありがたみがちっともないのである。

これはどうやら、エジプト政府が主導する「オープンエア・ミュージアム構想」とやらのおかげであろう。10年くらい前から唱えられている壮大な計画で、イスラム地区全体を「ミュージアム」にしてしまおうというもの。僕が留学していた3-5年前にも、ずいぶん多くのイスラム建築物が改修工事がなされていたが、今回見た限りでは、その工事もゆっくりと成果を上げている様子。

しかしその「成果」というのがくせ者で、もともと細かい彫刻が掘り巡らされていたはずの壁をコンクリートで塗り固めてしまったり、花崗岩と黒大理石を積み重ねた豪壮な門柱をコンクリート柱で代用してしまったり、色とりどりのタイルで覆われていた壁眼細工をコンクリートで塗り込めてしまったり...要するにすべてコンクリート造りのまっ白い建物にしてしまうのである。古い建物をそのまま保存するのは大変だとは思うが、なんとも味気ない話である。

以前読んだ英字新聞では、この「オープンエア・ミュージアム構想」のことを、「ファーティミッド・ランド計画」などと呼んで批判していた。カイロという町を初めて建設したファーティマ朝にちなんでのネーミングだが、同時に「ディズニーランド」的なテーマパークの出現に異を唱えてのものでもある。もしフトゥーフ門からズワイラ門まで、ネズミのぬいぐるみがエレクトリカルパレードをするというような徹底的な再開発が行われるなら、それはそれで面白いとは思うが。

イスラム地区の目抜き通りにあたるバイナルカスライン通り周辺の建物はほとんどが改築中か、改築済みで真っ白か、改築を待っている状態にある。古いものがなくなり新しいものに変わる。それを「味気ない」と非難するのは、よそ者の勝手な理屈なのかも知れないが、もう少しやりようがあるんじゃないかと思ってしまう。
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