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いよいよエジロックの時代が来るのか [音楽]

まずは、前回のエントリで紹介した「自由の声」、僕がブログに和訳を載せているのを、ツイッターを通じて見つけてくれた@ghhotiさんが、字幕にしてYoutubeにアップして下さいました。ありがとうございます!


この曲とビデオ、評判がいいようなので、この機会にエジプトのロック歌手の紹介をば。

作詞作曲とビデオ前半のボーカルを担当しているのは、アミール・エイド(Amir Eid)という人。はじめは気づかなかったが、何とこの人、「カイロキー(Cairokee)」というバンドのボーカルをやってる人だった。バンド名の「カイロキー」とは聞き慣れない単語だが、なんでも「カイロ」と「カラオケ」を組み合わせた造語だというから、日本人にも親近感が湧くではないか。公式サイトはこちら

彼らのビデオクリップはこんな感じ。もう、ボーカルの声質からしていかにもロックではないか。

「自由の声」のクレジットを見ると、ギターもこのバンドの人のようだ。

一方、ビデオ後半のボーカル担当で音楽プロデューサとしてクレジットされているのは、ハーニー・アーデル(Hany Adel)。下町ロックバンド「ウステルバラド(Wust el Balad)」のボーカルだ。バンド名は日本語で「下町、ダウンタウン」という意味。メンバー8人のやたら大所帯なバンドだ。公式サイトはこちら、フェースブックはこちら

彼らのビデオクリップは、昔このブログで書いたけど、なんとなくポップすぎてあまりよろしくない。しかし、ライブ演奏を元にしたこのMVは、泥臭くてものすごくかっこいいのでぜひ見て聞いてほしい。


前にも書いたとおり、エジプトのPOPスターたちがのきなみ体制支持の姿勢を見せていたのに対し、これらのロック歌手たちはみなデモ側にコミットしていたようだ。そこいらのPOPスターが、あの時のタハリールでビデオ撮影をしようものなら、デモ隊から帰れコールを浴びて即時退場となっていたことだろう。ロック=反体制という図式がエジプトにはまだ当てはまると言うことなのか。あるいは彼らロック歌手がずっとインディーズで日の目を見ない存在だったために、容易にデモ側に乗っかれたと言うことなのかもしれない。

さてデモ隊に加わるロック歌手としてはもう一人、前回名前だけ挙げたラーミー・エサーム(Ramy Essam)がいる。彼は連夜のタハリール広場の座り込みで、ギターを弾きながらシュプレヒコールを盛り上げた人物。フェースブックはこちら

「僕らみな、力を合わせ、望むのは ただひとつ
 出て行け!出て行け!出て行け!出て行け!」
すっごい単純なフレーズなんだけど、みんなで唱和してなんとも楽しそうだ。デモって言うのはこうでないと。
注目したいのはこのフレーズにある「力を合わせ」という部分、正しく訳すと「ひとつの手で(ايد واحده)」となるのだが、これはPOPスターのターメル・ホスニーが最近発表した、愛国ソングのタイトルだ。ターメルと言えば今回のデモに際して体制側の発言をしたためにデモ隊からむちゃくちゃ嫌われた歌手だが、このシュプレヒコールはそんな彼への当てこすりにもなっているのかも知れない。

で、この動画で使われてる音源が、リミックスされてた。ちゃんとした曲っぽくなっている。
RamyEssam

もう一人、エジプト人ロッカーではクール(Koor)という人が前から活躍してるけど、これはタハリールには来てなかったのかな。でも彼は彼で、こんな革命ソングを発表している。


こうして並べてみると、エジプシャン・ロックの世界も意外と層が厚そうだ。今回のデモで一躍名を世界に知らしめた彼らが、これからどう活躍の幅を広げていけるのか、今後が楽しみである。

※2月16日追記:
「自由の声」の原文が知りたい、というお問い合わせを受けたのですが、下記トラックバック元にある榮谷さんのブログ「アラビア語に興味があります。」では歌詞のアラビア語と日本語の対訳が掲載されています。是非ご覧下さい。
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コメント 8

K.Yamamoto

ほんとに久しぶりにnobutaさんのブログを覗いたのですが、大・大・大発見がありました。ウステルバラドのメンバーの一人が、私が昔とても仲よくしていた友だちでした…感涙…いつもギターを弾いて歌を歌ってくれたことや、一緒にムニールのコンサートに行ったことなど、ほんとになつかしいです。それからエジポップ・ファンのみなさん、パレスチナのDAMもよろしくね→http://www.damrap.com/ 映画『スリングショット・ヒップホップ』も今年中には公開されると思いますので、そっちもまた観に来てください→http://www.slingshothiphop.com/
by K.Yamamoto (2011-02-17 23:09) 

nobuta

Yamamotoさん、うらやまです。お友達に、ハーニーのサイン書いてもらってください...
スリングショット・ヒップホップ、一般公開するんですか!楽しみです。エジプトのヒップホップは基本体制よりで、低調なのではないかと思ってたんですが、やはりこの機にいっせいに革命曲をyoutubeに出してきていますね。
by nobuta (2011-02-17 23:18) 

HS

体制支持した人たちはみんなブラックリストに入れられたみたいですねえ。デモを批判するアーデル・イマームの発言がYouTubeに出ていて何だかなあと思っていたんですが、こういうリストが出回ること自体、これはこれでやな感じがします。
http://www.aawsat.com//details.asp?section=25&issueno=11770&article=608756
今、Facebookとかに関する原稿を書いていまして、كتاب بلد متعلم عليهاというトンデモ本を発見しました。これどう訳したらいいんですかね?
by HS (2011-02-22 12:28) 

nobuta

そうみたいですね>ブラックリスト
僕がElaphだか何かでみたバージョンでは、アムル・ディヤーブやムハンマド・ヘネーディーなどもリストに入っていて、これはエジプトの芸能地図が激変するなと思いました。まあ、ある程度みそぎが済んでほとぼりが冷めれば元通りになるかもしれませんが。
「よく知られた国の本」・・・?なんの本なのでしょうか?
by nobuta (2011-02-23 00:15) 

HS

本は小説らしいです。下記にそのページがあります。
http://www.facebook.com/group.php?gid=270187763497&v=wall
この本の表紙が、Facebookに批判的な人がみたFacebook利用者のイメージを典型的に表している感じがして、面白いなあと思ったわけです。Tシャツの胸につけられたホスニー・ターメルの顔が今となっては痛々しいですけど。去年、アズハルのファトワー委員会の元メンバーという人がFacebookは反イスラームだとするファトワーを出したんですが、その路線には合っているみたいです。
by HS (2011-02-23 09:50) 

nobuta

フェースブック批判本についてのコミュニティをフェースブック上に開設するって、かなり屈折してますねえ。Diwan書店でサイン会してる写真が面白いです。アズハルのファトワーについても知りませんでした。

フェースブックユーザーのアイドルだったはずのターメルが転落し、フェースブックに批判的だったアズハルも(同胞団も?)フェースブックには足を向けて寝られないエジプトの現状、複雑です。はて、フェースブックの方角ってどこなんでしょうかね?西も東も?
by nobuta (2011-02-23 13:07) 

HS

 引用した記事では、アムル・ディヤーブはロンドンに逃げたことになってます。それに対しモナ・ザキーなんかは1月25日にタフリール広場にいたらしいですね。えらい、というべきか、目端が利くというべきか。
 アズハルのファトワーはジャジーラで報じていたので、エジプトのメディアでは伝えられていないかもしれないです。夫が一所懸命働いているのに、妻はフェイスブックで出会いの場を求めて云々(その逆も)が理由だそうです(と記憶しております)。
by HS (2011-02-23 14:24) 

nobuta

アムル、いよいよ新曲だしましたねえ。مصر قالتという題で、youtubeに上がっています。
モナザキーは情報錯綜していたんですが、革命派ということでokになったんですね。
それからアウサトのurlを新しいエントリに引用させてもらいました。
by nobuta (2011-02-26 12:24) 

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